新しい里山の挑戦
忘れられないあの日、2025年7月。
夏の日差しが強い日、私は除草作業のために田んぼへ向かっていました。
水路では小さな魚たちが気持ちよさそうに泳いでいて、
思わずスマホでシャッターを切ったのを覚えています。
ここは「柳川生き物の里」。
蛍をはじめ、無数の生き物たちが暮らす豊かな地です。
そんなときでした。
上流の私の田んぼの一画から、地域の方の大きな声が響いたのです。
「大変だ!」
駆けつけてみると――
いつもの田んぼが、まったく違う風景に様変わりしていました。
真っ白に濁った水路、その先に続く田んぼ。
あたり一面に漂う、むせ返るような化学臭。
水面には、小さな魚たちが静かに浮かんでいました。
ほんの数時間前、気持ちよさそうに泳いでいたあの命たちです。
胸が締め付けられ、涙がこぼれました。
――なんてひどいことを。
どれだけの生き物たち、微生物たちが傷ついたのだろう。
土の息苦しい声が、確かに聞こえた気がしました。
私たちの大切に育ててきた田んぼの一画に、突如として農薬(除草剤・殺虫剤)が流入したのです。
原因は、地域の方による過失でした。
自宅に余っていた農薬を、適切に処分せず、水路に流してしまったのです。
長年農薬を扱ってきた方でしたが、「このくらいなら大丈夫」という思い込みが、悲しい結果を招きました。
この事実を知った瞬間、怒りで手が震えました。
私たちは、どんなに草が生えようと、虫に食べられようと、
ただひたすら手で草を抜き、無農薬で命を育ててきました。
自然と共に生きる――そう信じてきた日々が、一瞬で崩れ落ちた気がしました。
それでも、地域の方々がすぐに異変に気が付き、畦を壊し対処しました。
なんとか圃場への残留は免れましたが、胸の奥の苦しみは未だ消えることはありません。
土壌微生物への影響は計り知れない。
――元に戻るのにどのくらいかかるのだろう。
夏の陽に照らされ
青々と育つ稲が
あの日は痛々しく見えました。
真っ白になった水の中で、
それでも稲は、強くたくましく
上を向いてまっすぐに伸びている。
その姿を見つめながら
思い至ったのは、私たちのお米を楽しみにしてくださってる方々のことでした。
「このお米をお届けするわけにはいかない。」
私たちは、苦渋の決断として、この区画のお米を2年間販売せず、土壌改良と再生に努めることを選びました。
悲しみではなく希望を選んで
どれほど悔しくても、過去は戻せません。
けれど、あの日を「悲しみの終わり」にしたくありませんでした。
あの出来事を”問い”に変えたい。
「なぜこんなことが起きてしまったのか」
「そしてこれからどうすれば守れるのか」―――
当初、流出者への補償請求も検討しました。
試算した費用は、少なく見積もっても約150万円。(米の賠償や土壌改良、検査費用などを含みます)
しかしこれは、個人に背負わせるにはあまりにも大きな額です。
そして何より——
責めたとしても、悲しみしか残りません。
補償を得たとしても、この問題は「個人の過失」として小さく片づけられ、地域にはきっと深い禍根を残してしまう。
だからこそ、私たちは“希望”を選びました。
この出来事を「終わり」にするのではなく、
「再生の始まり」に変えたい。
田んぼだけでなく、地域と、里山と、命の循環をもう一度取り戻したい。
そう思ったとき、見えてきたのは“構造の問題”でした。
今回農薬を流出させたのは、長年農薬を販売・管理してきた立場の方でした。
そのような人ですら過失を犯してしまう――。「農薬が余り、適切に処分されず、流出する」という
社会の仕組みそのものに課題があるのではないでしょうか。
この出来事を、誰かの責任で終わらせるのではなく、
地域みんなで考える“きっかけ”に変えよう。
そう私たちは決めました。
その一歩として、地域の農家さんに向けて今回の報告書を作成し、「もしご自宅に余って処理に困っている農薬があったら、一声かけてください」と手紙を添えてお渡ししました。
農薬を責めるのではなく、共に見直し、共に防ぐ。
それが、私たちが選んだ“共生の道”です。
問いを希望に変える挑戦。
それが――
「一粒万倍の種プロジェクト Vol.2 新しい里山挑戦プロジェクト」です。
3つの挑戦
(1) 田んぼを癒し、未来へつなぐ
農薬流入の被害を受けた田んぼは、今、静かに再生の時を迎えています。これまでの「無農薬・無肥料」の自然農法から、「有機」という新たなステージへ進みます。
竹林整備で採れ田んぼで使用した竹の炭や、自社の米のぬか、地域の循環資源を活かして土を蘇らせる。化学肥料はもちろん、牛糞等他から持ち込むものには頼らず、あくまで”その地の恵み”で再生する挑戦です。
収益がなくとも、この問題を隠さずに伝え、
大地を癒し、命をつなぐ姿勢を貫きます。
それが、未来の農を守る私たちの約束です。
(2) 森と水の循環を取り戻す
田んぼは森と水の循環の中で成り立っています。目に見えない微生物が土を豊かにし、稲を育て、生き物たちの命を支えています。森の手入れが止まれば水は濁り、水が汚れれば微生物が減る。微生物が減れば、稲も田んぼも命が弱ってしまう。
流入の影響を受けた田んぼを保全するだけでなく、
その周囲の森の整備、水路の保全にも力を入れることに決めました。
水がきれいに流れ、微生物が生きを吹き返し、
魚やカエル、トンボが戻ってくるーーー。
そんな里山を取り戻すことが
未来の里山を育てるという私たちの答えです。
(3) 耕作放棄地を宝に変える
農薬が流れ込んだあの日、真っ白になった田んぼ、弱っていく生き物たち――その光景は私たちに深い問いを投げかけました。
「どうすればもっと自然と共生できる仕組みにできるのか?」
私たちが次に取り組むのは、長い間手つかずだった耕作放棄地の再生です。
3年以上農薬が使われていない土地は、微生物が豊かに眠る“宝庫”。その土地を田畑としてよみがえらせていく。
命の循環を取り戻す農への挑戦です。
ご協力のお願い
お米が販売できないということは、一年間頑張ってきた米農家にとっては大打撃です。ですが、私たちはこの時間を土壌の回復をただ「待つ」期間ではなく「育てなおす」期間にしたいと思っています。
多くの方にこの問題を感じ、
共に動き出してほしい。
あなたの一歩が、この土地の未来を変えていくからです。
協力金の利益は、全額、農薬が入った田圃の土壌改良費(土壌改良のための資材と人件費)、検査費、近隣で余っている農薬の処分費用に活用させていただき、ご報告させていただきます。
■土壌改良を応援!
土壌改良:ひと口6,600円(税込)
返礼品:お米2キロ
販売は控えることにしましたが、土壌からも農薬の検知はなく、お米自体にも残留農薬は一切検知されておりません。(検査証こちら)試食をしましたが、大変美味しいお米です。
■活動で応援!
ファウナバランスでは、循環型農業と里山保全のチーム『秦野田圃×里山フィールドサポーターズ』を運営しております。今回このサポーターズに『サポーターズ+(プラス)』を新設。サポーターズとして一緒に里山保全、田んぼの保全、耕作放棄地の再生に参加しませんか?
(1)サポーターズ+(プラス)
年間会費:66,000円(税込)
活動に参加した方に。月に2回の現地活動(※2名より催行)、お米2キロ、月1オンラインカフェ参加。
(2)パートナーズ
月会費:1,100円(税込)
現地にはなかなか来られないけど応援したい方に。月1オンラインカフェ参加。
※サポーターズに関して詳しくはこちら
■里山プレミアムパスで応援!
里山プレミアムパス:ひと口220,000円(税込)
里山の理念に共鳴し、活動全体を応援してくださる特別な支援枠です。現場にはなかなか来られなくても、「想いを支える力」こそが、このプロジェクトの大きな原動力になります。
特典:
・白井寛人のプライベートランチ(年1回ご招待)
・ファウナバランス主催のイベント(月1)に自由参加可能
・特別サポーターとして活動レポートにお名前掲載(任意)
なお、協力金の会計は株式会社ファウナバランスが責任をもって管理し、土壌改良・検査・農薬処分の進捗および収支報告を、年2回(春・秋)、公式サイトにて公開、メールにてお送りいたします。ご支援いただいた皆さまへの報告を欠かさず、透明性を大切にしてまいります。
※本プロジェクトは任意のご支援をお願いするものであり、寄附金控除の対象にはなりません。領収書の発行をご希望の方は、フォームよりお知らせください。
<主催・運営>
株式会社ファウナバランス
代表 白井寛人
神奈川県秦野市緑町17-31-103
どうかこの挑戦に
あなたの想いを重ねてください。
その一歩が、未来の田んぼを
里山を、そして食を守ります。
皆さまのご支援をお待ちしております。
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